特定技能介護の受け入れは、制度を知っていても「この施設は対象か」で迷いが残りがちです。受け入れ可能施設の整理に加え、有料老人ホームや訪問介護など判断に迷いやすい業態も含め、迷わず判断するための考え方をわかりやすくまとめます。
特定技能介護の受け入れ可否は、まず「対象施設」で判断するのが基本
この章で扱う主なポイントは以下のとおりです。
- 受け入れ可否は施設種別ごとに区分されている
- 同じ法人でも施設の種類が違えば扱いが変わる
- 施設の種類だけでは判断できないケースもある
特定技能介護の受け入れ可否を考える際、最初に確認すべきなのは施設種別です。受け入れ対象が施設種別ごとに明確に区分されているためです。
複数の業態を運営している法人では、同じ法人内であっても施設の種類が違えば扱いが変わることがあります。
この章では、受け入れ可能な施設の一覧を整理し、例外的に施設の種類だけでは判断できないケースがある点も含めて全体像を押さえます。
受け入れ可否は施設種別ごとに区分されている
特定技能介護の受け入れができる施設かどうかは、厚生労働省「介護分野の1号特定技能外国人を受け入れる対象施設について」で確認することができます。
以下では厚生労働省が公表している対象施設をもとに、受け入れ可能な施設を整理します。
特定技能介護受け入れ対象施設一覧
区分ごとに、対象となる施設・事業を列挙しています。
| 区分 | 対象施設・事業 |
|---|---|
| 児童福祉法関係の施設・事業 |
|
| 障害者総合支援法関係の施設・事業 |
|
| 老人福祉法・介護保険法関係の施設・事業 |
|
| 生活保護法関係の施設 |
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| その他の社会福祉施設等 |
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| 病院又は診療所 |
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特定技能介護の受け入れが一部対象となる施設一覧
区分ごとに、受け入れが一部対象となる施設・事業を列挙しています。
| 区分 | 対象施設・事業 |
|---|---|
| 老人福祉法・介護保険法関係の施設・事業 |
|
※1 特定施設入居者生活介護(外部サービス利用型特定施設入居者生活介護を除く。)、介護予防特定施設入居者生活 介護(外部サービス利用型介護予防特定施設入居者生活介護を除く。)、地域密着型特定施設入居者生活介護(外部サービス利用型地域密着型特定施設入居者生活介護を除く。)を行う施設を対象とする。
※2 訪問系サービスに従事することは除く。
※3 有料老人ホームとして要件を満たす施設のみ、有料老人ホームに該当するものとして対象とする
出典:厚生労働省「介護分野の1号特定技能外国人を受け入れる対象施設について」
一方、同じ法人内であっても、複数の介護施設の種別を運営している場合は注意が必要です。 同じ法人が運営する施設であっても、ある施設では特定技能介護の就労が可能である一方、別の介護施設では特定技能介護の就労が認められないケースがあるためです。
この点を整理せずに法人単位で判断してしまうと、「同じ法人だから問題ない」という誤解につながりやすくなります。
同じ法人でも施設名が違えば扱いが変わる理由
同じ法人が運営している施設であっても、特定技能介護の受け入れ可否が異なることは珍しくありません。
その理由は、法人単位ではなく、施設ごとに“どの介護サービスとして許認可を受けているか”が判断のポイントになるためです。採用や人事を法人本部で一元管理している場合、この点を見落とすと判断を誤りやすくなります。
例えば、特別養護老人ホームとデイサービスを併設している法人では、どちらも特定技能介護の受け入れ対象施設であり、原則としてどちらの施設でも特定技能外国人の受け入れが可能です。
一方で、同じ法人が運営している場合でも、「指定特定施設入居者生活介護」と「サービス付き高齢者向け住宅」などでは、施設ごとに受け入れ条件が異なる場合があります。法人名が同じでも、各事業所が行政から受けている許認可の種類が異なるためです。
この違いを正しく理解していないと、本来は特定技能介護として従事できない業務に就かせてしまうリスクがあります。その結果、是正指導だけでなく、今後特定技能外国人を受け入れられなくなるなどの処分につながる可能性もあります。
特定技能介護は配置先と業務内容が厳密に確認される制度であるため、「同じ法人だから大丈夫」と判断せず、施設名・許認可の種類・実際の業務内容をセットで確認することが不可欠です。
施設名だけでは判断できないケースがあることも押さえておく
特定技能介護の受け入れ可否は、原則として施設名を起点に判断できますが、それだけでは足りないケースもあります。施設名が同じであっても、制度上どの許認可を受けているかによって、受け入れ可否が変わることがあるためです。
代表的なのが有料老人ホームです。「有料老人ホーム」という名称が付いていても、特定施設入居者生活介護、介護予防特定施設入居者生活介護、地域密着型特定施設入居者生活介護のいずれかの指定を受けている場合と、そうでない場合とでは扱いが異なります。
これらの指定を受けている施設は、特定技能介護の受け入れ対象となります。しかし、外部サービス利用型での場合は対象外とされています。
一方、サービス付き高齢者向け住宅のように、施設としては有料老人ホームに該当していても、有料老人ホームとしての要件を満たさない場合は、特定技能介護の対象にはなりません。名称だけを見て判断してしまうと、制度上は対象外となる業態で特定技能介護を配置してしまうリスクが生じます。
また、同一施設内で複数のサービスを提供しているケースにも注意が必要です。施設としては受け入れ可能であっても、特定技能介護として認められていない業務に従事させてしまうと問題になります。本来、特定技能介護として従事できない業務に就かせた場合、是正指導だけでなく、今後特定技能外国人を受け入れられなくなるなどの処分を受ける可能性もあります。
そのため、施設名を起点に判断しつつも、最終的には「どの許認可を受けている施設なのか」「どの業務に従事させるのか」を必ず確認することが重要です。施設名と制度上の位置づけ、実際の業務内容をあわせて確認することで、制度違反のリスクを避けやすくなります。
施設が特定技能介護人材を受け入れるための要件
特定技能介護の受け入れ可否は、対象施設に該当するかどうかだけで決まるものではありません。実際には、施設として満たすべき要件や運用上の条件が複数あり、それらを総合的にクリアしてはじめて受け入れが可能となります。対象施設に該当していても、要件を満たしていなければ特定技能介護を配置することはできません。
特に注意が必要なのは、従事させる業務内容、施設ごとの受け入れ可能人数、外国人材に対する支援体制です。これらは書類上だけでなく、実際の運用状況も確認されるポイントであり、形式的に整えているだけでは不十分と判断されることがあります。また、特定技能協議会への加入や必要な届出など、制度上の手続き面も欠かせません。
この章では、施設が特定技能介護を受け入れるために押さえておくべき要件を整理します。
特定技能介護として従事できる業務の範囲
特定技能介護として従事できる業務は、介護現場で行われているすべての業務ではありません。従事できる主な業務は「身体介護」を中心とした介護業務と、それに付随する生活支援等です。対象施設に該当していても、実際の業務内容がこの範囲に収まっていなければ、特定技能介護としての就労は認められません。
特定技能介護として認められている主な業務の例は、次のとおりです。
- 食事介助、入浴介助、排せつ介助などの身体介護
- 移動・移乗の介助、見守り
- 介護記録の作成
- レクリエーションや機能訓練の補助
- その他、介護業務に付随する生活支援
これらはいずれも、介護業務の一環として行われるものであり、日常的な業務の中心となっていることが前提です。
一方で、以下の特定技能介護として認められない業務にも注意が必要です。
- 調理業務のみを主とする業務
- 清掃業務のみ、またはそれが主となる業務
- 事務作業のみへの従事
- 介護との関連性が薄い周辺業務を恒常的に行わせること
介護業務に付随して一部行うこと自体は問題ありませんが、それが主業務になってしまうと制度の範囲を逸脱してしまいます。
また、同一施設内で複数のサービスを提供している場合でも、特定技能介護として認められていない業務に恒常的に従事させることはできません。業務内容は雇用契約書や支援計画だけでなく、実際の勤務実態も確認対象となります。
そのため、受け入れを検討する際は、「この施設が対象か」だけでなく、「日常的にどの業務に従事させるのか」を具体的に整理しておくことが不可欠です。できる業務とできない業務を明確に区別したうえで配置を検討することで、制度違反のリスクを避けながら、安定した受け入れにつなげることができます。
受け入れ可能な人数の考え方
特定技能介護の受け入れ人数には、明確な基準があります。介護分野における特定技能外国人の雇用では、事業所単位で、日本人等の常勤介護職員の総数を超えてはならないと定められています。つまり、特定技能外国人の人数は、各事業所に配置されている「日本人等の常勤介護職員数」が上限となります。
ここで注意したいのが、「日本人等」に含まれる範囲です。これは、日本国籍を持つ常勤の介護職員だけを指すものではありません。以下のような人材も「日本人等」に含まれます。
- 日本国籍を持つ常勤の介護職員
- EPAに基づき来日し、介護福祉士国家試験に合格したEPA介護福祉士
- 在留資格「介護」を有する外国人介護職員
- 永住者、日本人の配偶者等、永住者の配偶者等など、身分や地位に基づく在留資格を持つ常勤介護職員
一方で、技能実習生や、特定技能外国人同士は、この「日本人等」には含まれません。そのため、人数計算を誤ると、知らないうちに上限を超えてしまうリスクがあります。
また、この人数基準は法人単位ではなく、あくまで事業所単位で判断されます。法人全体としては十分な人員が確保できていても、特定の事業所において日本人等の常勤介護職員数が少ない場合、その事業所では特定技能外国人を受け入れられない、あるいは人数を制限されることになります。
人員配置を検討する際は、単に「何人受け入れたいか」ではなく、「各事業所ごとに、日本人等の常勤介護職員が何人在籍しているか」を正確に把握することが不可欠です。この前提を整理したうえで受け入れ計画を立てることで、制度違反のリスクを避けながら、安定した運用につなげることができます。
特定技能介護で義務づけられている支援体制と支援計画の考え方
特定技能介護の受け入れでは、現場での指導体制とは別に、「支援体制」を整える必要があります。
この支援体制は入管法に基づく義務であり、対応できていない場合は受け入れ自体が認められません。
支援計画の作成が必須
特定技能外国人を雇用する際、受け入れ機関は「支援計画書」を作成する必要があります。この支援計画書には、法令で定められた10項目の支援内容を記載しなければなりません。
支援計画に含める10項目
支援計画では、主に以下のような内容を整理します。
- 入国前後のオリエンテーション
- 住居の確保・生活に関する支援
- 日本のルールや生活マナーの説明
- 公的手続き(住民登録、社会保険等)の補助
- 日本語学習の機会の提供
- 相談・苦情への対応体制
- 日本人との交流促進
- 転職防止・定着支援に関する取り組み
- 非自発的離職時の支援
- 定期的な面談と行政への報告
支援は自社対応も可能だが、登録支援機関に委託するケースが多い
これらの支援は、受け入れ法人が自社で実施することも可能です。
ただし、実務負担や制度理解の難しさから、実際には登録支援機関に委託している法人が大半です。
特定技能協議会への加入が必須
特定技能「介護」で外国人を受け入れる場合、受入機関は必ず「介護分野特定技能協議会」に加入する必要があります。
協議会は、特定技能外国人の適正な受け入れと就労環境の確保を目的として設置されており、受入機関は構成員として制度運用への協力が求められます。具体的には、制度に関する情報共有や、必要に応じた調査・報告への対応などが想定されています。
手続きについては、
- 初めて特定技能外国人を受け入れる場合
- すでに協議会に加入している受入機関が、新たに特定技能外国人を受け入れる場合
で一部流れが異なります。ただし、いずれの場合であっても「受け入れの開始にあわせて、協議会への加入や必要な届出を行うこと」が前提となります。
なお、協議会への加入手続きや届出の詳細は、制度改正や運用見直しによって変更されることがあります。そのため、実務を進める際には、厚生労働省が公表している最新の公式資料を必ず確認することが重要です。
※手続きの詳細は、厚生労働省が公表している以下の資料をご参照ください。
2025年4月から条件付きで可能となった訪問介護の注意点
2025年4月の制度改正により、特定技能介護において訪問介護が条件付きで認められるようになりました。ただし、これは訪問介護が全面的に解禁されたわけではなく、対象となるサービスや配置方法、運用には制約があります。
この章では、なぜ訪問介護が対象に加えられたのかという背景を整理したうえで、対象となる訪問系サービスの範囲、特定技能外国人を訪問介護に従事させるための要件を確認します。制度の趣旨と条件を正しく理解することで、誤った配置や制度違反を防ぐことを目的とします。
特定技能介護で訪問介護が解禁された背景
特定技能介護において訪問介護が条件付きで認められるようになった背景には、在宅介護分野における深刻な人手不足があります。施設系サービスに比べ、訪問介護は担い手の確保が特に難しく、高齢者が在宅で生活を続けるための基盤が揺らいでいる状況が続いていました。
こうした課題を受け、施設内業務を前提としてきた特定技能介護についても、一定の条件を満たす場合に限り、訪問介護への従事を認める方向で見直しが行われました。
ただし、今回の制度改正は「訪問介護の全面解禁」ではありません。一定の経験や能力を備えた特定技能外国人に限定し、事業所側にも明確な管理・支援体制を求めることで、利用者保護と人材活用の両立を図っています。
対象となる訪問系サービス・施設
訪問系サービスのうち特定技能介護の対象とされている施設・事業所を一覧で紹介します。
老人福祉法・介護保険法関係の訪問系サービス
- 指定訪問入浴介護
- 指定介護予防訪問入浴介護
- 第1号訪問事業
- 指定訪問介護
- 指定夜間対応型訪問介護
- 指定定期巡回・随時対応型訪問介護看護
障害者総合支援法関係の訪問系サービス
- 居宅介護
- 重度訪問介護
- 訪問入浴サービス
児童福祉法関係の訪問系サービス
- 居宅訪問型児童発達支援
- 保育所等訪問支援
訪問系サービスについては、厚生労働省が公表している「介護分野の1号特定技能外国人を受け入れる対象施設について」を確認することで、制度上どのサービスが整理対象となっているのかを把握できます。
特定技能外国人が訪問介護に従事するための要件
特定技能介護の外国人が訪問介護に従事できるのは、以下の要件を満たす場合に限られます。施設系と同じ感覚で配置判断をするとズレが出るため、要件を満たしているかのチェックが必要です。
- 在留資格 特定技能 の介護分野を所持していること
- 介護職員初任者研修課程等を修了し、介護事業所等での実務経験が1年以上ある
特定技能介護の受け入れを法人全体で進めていくためのまとめ
特定技能介護の受け入れを検討する際は、「法人として受け入れられるか」ではなく、「どの施設・事業所が制度上の対象になるか」を起点に整理することが重要です。
受け入れ可否は、施設名や指定区分、実際の業務内容によって変わります。法人単位で一律に判断してしまうと、制度違反や配置ミスにつながりやすくなります。複数の業態を運営している法人では、事業所ごとの整理が欠かせません。
対象施設かどうか、従事できる業務の範囲、訪問介護の条件などを明確にしておく必要があります。これらの判断基準を本部と現場で共有しておくことで、採用時や配置時の迷いを減らせます。
結果として、特定技能介護の受け入れを安全かつ継続的に進めやすくなります。

