特定技能(介護)で働く外国人は、5年後も日本で働き続けられるのでしょうか。介護福祉士に合格すれば5年を超えて働くことができますが、実際には合格率や受験回数の壁があります。本記事では、在留期間の延長や介護福祉士国家試験パート合格制度を踏まえ、施設側が取るべき現実的な選択肢を整理します。
特定技能(介護)を含め、介護分野で認められている在留資格全体については、こちらの記事で詳しく整理しています。
→【2026年最新版】介護の在留資格を徹底解説!種類・要件・申請方法・注意点
特定技能5年間で介護福祉士国家試験を受験できる回数は限られている
まず押さえておきたいのは、次の3点です。
- 受験資格には、実務経験+研修修了という条件がある
- 国家試験は年1回しかなく、受験できる回数は限られる
- 5年目に初めて受験する計画では間に合わない
これらを踏まえると、介護分野特定技能の5年間は、見た目以上に短い期間だと分かります。
問題になるのは、合格率だけではありません。受験できる回数そのものが制約になるという点が重要です。
ここでは、なぜ「時間切れ」が起きやすいのかを整理します。
受験資格は3年以上の実務経験と実務者研修修了が必要
介護福祉士国家試験の受験資格を得るためには、条件があります。主な要件は、「3年以上の実務経験」と「実務者研修修了」です。
この2つを満たして、初めて受験が可能になります。受験資格の詳細は、介護福祉士国家試験を主催する公益財団法人社会福祉振興・試験センターの公式案内で確認できます。
特定技能で来日した直後に、すぐ受験できるわけではありません。現場で経験を積みながら、研修も修了しなければなりません。準備が遅れると、受験できるタイミングそのものが後ろ倒しになります。この点を理解せずに計画を立てると、想定より時間が足りなくなってしまいます。
介護福祉士国家試験では、受験申し込み時点で実務経験の要件を満たしていなかったとしても、試験実施年度の年度末3月31日までに、必要な従業期間・従事日数を満たす見込みがある場合は、 「実務経験見込み」として受験可能です。
この仕組みを理解しておくことで、受験時期を1年早められるケースもあります。 ただし、見込みで受験する場合であっても、実務経験や研修修了の計画が曖昧だと成立しません。 早い段階からスケジュールを整理しておくことが前提になります。
国家試験は年1回で、実質1〜2回しかチャンスがない
介護福祉士国家試験は、年に1回しか実施されません。時期は例年毎年1月下旬に開催されています。
不合格になった場合、次の試験まで1年待つ必要があります。
特定技能介護は最大5年しかないので、実務経験や研修の時期を考えると、受験できる回数は限られます。多くの場合、最大でも3回、多くの場合は2回が現実的です。
転職などにより残り期間が4年しかない場合は、実質1回になることもあります。
受験可能な回数が少ないこと自体が、大きなリスクになります。
5年以内に介護福祉士に合格できないケースが多い3つの理由
この背景には、いくつか共通する要因があります。
- 外国人受験者は、日本人と比べて合格率が低い傾向がある
- 国家試験では、日本語力と専門用語の読解が大きな壁になる
- 実務・学習・生活を同時にこなす負荷が想像以上に大きい
これらを踏まえると、「5年間あれば合格できるだろう」という考えは現実的とは言えません。
合格に至らないケースの多くは、本人の能力不足ではなく、環境や制度による構造的な要因が重なった結果です。
この章では、なぜ計画どおりに合格が進まないのかを整理します。
外国人受験者は日本人と比べて合格率が低い傾向がある
外国人受験者は、日本人と比べて介護福祉士国家試験の合格率が低い傾向があります。 厚生労働省が公表した「第37回介護福祉士国家試験 合格発表」によると、受験者全体の合格率は78.3%でした。 一方、特定技能1号の受験者の合格率は33.3%にとどまっています。
直近10年の介護福祉士国家試験における合格率を整理すると、次のようになります。
| 回 | 受験者全体合格率(%) | 特定技能1号 合格率(%) |
|---|---|---|
| 第28回 | 57.9 | |
| 第29回 | 72.1 | |
| 第30回 | 70.8 | |
| 第31回 | 73.7 | |
| 第32回 | 69.9 | |
| 第33回 | 71.0 | |
| 第34回 | 72.3 | |
| 第35回 | 84.3 | |
| 第36回 | 82.8 | 38.5 |
| 第37回 | 78.3 | 33.3 |
この点は、本人の努力不足だけで説明できるものではありません。試験制度そのものが、日本語を母語とする人を前提に作られています。結果として、外国人の合格率が低く、一度で合格できないケースが多くあるのです。施設側が「5年あれば受かるだろう」と考えると、計画にズレが生じます。
国家試験は日本語力と専門用語の読解が大きな壁になる
介護福祉士国家試験は、専門知識の試験であると同時に、日本語の読解試験でもあります。現場での会話ができても、試験問題を正確に読み取れるとは限りません。漢字や抽象的な表現、専門用語が多く使われています。
例えば、日常業務で使わない言い回しが頻繁に出題されます。意味を取り違えると、知識があっても不正解になります。
このギャップが、外国人受験者にとって大きな負担になります。日本語力の壁は、想像以上に合否へ影響してます。
特定技能(介護)の5年満了後はどうなるのか、施設が知っておくべき3つのポイント
まず押さえておきたいのは、次の3点です。
- 通算5年ルールにより、原則として特定技能(介護)の在留期間は満了する
- 在留資格「介護」へ切り替えられる人は一部に限られる
- 5年以上働くためには介護福祉士合格は必須だが、日本人と同じ前提で考えると想定外が起きやすい
特定技能(介護)は在留資格「介護」に切り替えられれば5年以上働くことができます。ただし、計画的な準備をしなければ、5年で区切りを迎える可能性が高くなります。まずは制度の基本構造と、施設側が理解しておくべき前提を整理します。
通算5年ルールにより、特定技能1号(介護)の在留期間は満了する
特定技能1号(介護)の在留期間は通算で最長5年です。この期間を超えて、同じ在留資格で働き続けることはできません。介護分野では特定技能2号の制度は設けられていないため、原則として5年を超えて特定技能として働き続けることはできません。
在留資格「介護」へ切り替えられる人は一部に限られる
5年後も日本で働き続ける方法の一つが、在留資格「介護」への切り替えです。ただし、在留資格「介護」に切り替えるためには介護福祉士国家試験の合格が求められます。5年後に在留資格「介護」へ切り替えられるかどうかは、 本人の希望だけでなく、条件を満たせたかどうかで決まります。
外国人が介護福祉士国家試験に合格することは、簡単ではありません。実務経験、研修修了、日本語力、試験対策の積み重ねなど、いくつもの条件を5年以内にクリアしなければなりません。そのため、実際に在留資格「介護」へ切り替えられるのは、 特定技能(介護)で働く人の中でも限られた一部の人にとどまります。
在留資格「介護」への切り替えを現実的な選択肢にするには、 入社時点から5年間の道筋を本人と共有しておくことが欠かせません。どのタイミングで受験を目指すのか、 何年目までにどこまで到達すべきなのか。 こうした前提を早い段階で整理し、 施設と本人の間で共通認識を持っておくことが重要です。
介護福祉士国家試験を日本人と同じ前提で考えると想定外が起きやすい
介護福祉士国家試験の全体の合格率は年によって変動はありますが、直近10年のデータから求められる平均合格率は約71.9%です。10人に7人は合格すると考えると、介護福祉士試験の難易度はそれほど高くないといえるかもしれません。
ただし、日本人と同じ感覚で考えると、想定外が起きやすくなります。外国人にとって国家試験は、日本語力や専門用語の理解が大きな壁になるためです。
日本人介護士と同じ感覚で、実務者研修を受けさせて、あとは独学で試験対策をしてもらえれば合格するだろう、と想定するのは危険です。外国人介護士には外国人に向けた教育を追加で行う必要があります。外国人には日本人以上に手厚いフォローが必要だという認識を持つことが、長期的に働いてもらうための第一歩となります。
実務・学習・生活を同時にこなす負荷が想像以上に大きい
多くの外国人介護士は、フルタイムで現場に立ちながら試験勉強を行っています。業務に慣れるだけでも時間と体力が必要です。そのうえで学習時間を確保するのは簡単ではありません。
生活面の負担も無視できません。日本での生活や手続きに慣れるだけでも、精神的な余裕が削られます。こうした状況では、継続的な学習が難しくなってしまいます。合格できない背景には、こうした現実があります。
一発合格を前提としていると帰国となるケースも…
一発合格を前提とし、「5年目に受験すればいい」と考えるのは危険です。この時点で不合格になると、再受験の余地がありません。在留期間満了が先に来てしまい、帰国せざるを得なくなります。
だからこそ、早い段階から受験計画を立てることが重要です。
特定技能5年を前提に考える、現実的な受験スケジュールと育成計画
ここでは、特定技能(介護)の5年間をどのように使えばよいのか、時間軸を意識した受験と育成の考え方を整理します。
- 入社直後から意識しておきたい準備内容
- 実務者研修を受けさせる適切なタイミング
- 一発合格に頼らない現実的な受験戦略
これらを把握しておくことで、長期的な人材確保が可能になります。施設側が主導して計画を描くことが、結果的に人材定着につながります。
1年目から2年目にやるべき日本語力と基礎知識の準備
1年目は日本語力の向上と初任者研修の修了に集中することが重要です。まずは業務に支障が出ないようにするため、現場で必要な日本語を正確に理解できる状態を目指します。そして初任者研修を修了しておくことで、介護の基本的な考え方や用語を体系的に学ぶことができます。
これは、後の実務経験や試験学習の理解度を大きく左右します。
現場で使う言葉と、試験で使われる言葉には差があります。その差を埋めるためには、日常業務の中で用語を意識的に拾う工夫も必要です。
記録用語や制度名をその都度説明しながら共有するだけでも効果があります。1年目にこの土台を作っておくと、2年目以降の学習が格段に進めやすくなります。
実務者研修はいつ・どのタイミングで受けさせるべきか
実務者研修は、介護福祉士国家試験の受験資格を満たすために欠かせません。そのため、2年目に入ってから実務者研修を計画的に受講させるのが現実的です。
4月入社の場合、1年目で日本語力と基礎理解を整えたうえで、2年目に実務者研修を進めることで、無理なく研修内容を理解できます。
基礎ができていない状態で受講すると、研修そのものが負担になりがちです。
直前になって慌てて受講させると、業務との両立が難しくなります。また、研修修了が間に合わず、受験自体が先送りになるケースもあります。
2年目のうちに実務者研修を終えておくことで、3年目に国家試験受験という流れが現実的になります。
理想的な学習スケジュール〈例:4月1日入社の場合〉
| 1年目 | 2年目 | 3年目 | 4年目 | 5年目 |
|---|---|---|---|---|
|
日本語力向上 初任者研修 |
実務者研修 | 1月受験 ※ | 1月受験 | 1月受験 |
※ 4月1日入社の場合、試験実施年度の3月31日までに、3年の実務経験をクリアできるので、 「実務経験見込み」として受験することができます。
5年目の介護福祉士国家試験が不合格だったら帰国するしかないのか?
以前は5年目の介護福祉士国家試験が不合格だった場合、帰国するしかありませんでした。しかし第38回介護福祉士国家試験(令和8年実施)より、パート合格制度が始まりました。これに伴いパート合格をした介護分野の特定技能外国人の在留期間延長が認められるようになりました。
次の章では、5年目に不合格だった場合に、介護福祉士国家試験のパート合格について整理します。
パート合格と在留期間延長で変わる5年後の選択肢
ここからは、特定技能(介護)の5年後を考えるうえで重要になってくる、パート合格者の特定技能在留期間延長について説明します。
- 介護福祉士国家試験における「パート合格」の正しい位置づけ
- 在留期間延長制度が、どのようなケースを想定しているのか
- 延長された期間をどう使えば、在留資格「介護」につなげられるのか
これらを理解することで、5年目に介護福祉士国家試験が不合格であっても帰国せずに済む方法を取ることができます。
介護福祉士国家試験における「パート合格」とは
パート合格として在留期間延長の対象になるためには、単に一部の科目に合格すればよいわけではありません。厚生労働省は、介護分野の特定技能外国人について、介護福祉士国家試験の結果を踏まえた在留期間延長の新たな措置を示しています。以下は、同省が公表している制度内容の該当部分です。
第38回介護福祉士国家試験(令和8年実施)より、介護分野の特定技能外国人のうち、特定技能の在留期間(通算5年)経過直前の介護福祉士国家試験において全パートを受験し、
① 当該試験において1パート以上合格している、かつ
② 当該試験において総得点に対する合格基準点の8割以上の得点がある
等の一定の要件を満たした方については、最長1年間の在留期間延長を可能とする。
また、以下の要件を満たすことが求められている。
- 翌年度の介護福祉士国家試験合格に向けた学習意欲があり、かつ受験を誓約すること
- 特定技能所属機関が、本人とともに学習計画を作成し、厚生労働省へ提出すること
出典:厚生労働省「介護福祉士国家試験のパート合格による介護分野における特定技能外国人の在留期間延長に関する措置について」
これらの要件を満たした場合、最長1年間の在留期間延長が可能になります。パート合格は試験結果・学習意欲・施設の支援体制がセットで評価される制度だと理解しておく必要があります。
在留期間延長制度が想定している現実的なケースとは
在留期間延長制度は、介護福祉士国家試験の結果と、学習や受験の状況を踏まえて適用されます。
想定されているのは、合格を目指して取り組んでいるものの、5年以内に全科目合格に至らなかったケースです。努力の途中段階にある人材を、「不合格だから」という理由だけで帰国させないための制度設計になっています。
もちろん在留期間延長制度があるからと言って、5年以内に介護福祉士国家試験に合格できなくてもいいというわけではありません。前提は延長制度を使わず、5年以内に合格を目指し、計画的に学習していくことが大切です
延長期間をどう使えば在留資格「介護」につなげられるのか
在留期間が延長された場合、その時間は次の受験機会を確保するための猶予期間になります。延長そのものがゴールになるわけではありません。
この期間では、未合格となった科目を中心に、試験対策を集中的に行うことが求められます。
あわせて、学習計画や支援体制を見直し、次の受験に向けた準備を整える必要があります。
延長期間を計画的に使い、次の試験で介護福祉士国家試験に合格できれば在留資格「介護」への切り替えが可能です。
制度を正しく理解し、「時間をどう使うか」を考えられるかどうかが、5年後の結果を大きく左右します。
外国人介護士を5年後も戦力にするために施設が今すぐやるべき3つのこと
ここまで見てきたとおり、特定技能(介護)で5年後も働いてもらうためには、制度を知るだけでは足りません。
施設側が 最初に方針を決め、外国人介護士が働きながら学習していける仕組みを作ることが重要です。
- 合格率と受験回数を前提に、無理のない育成方針を定める
- 実務の中で学習を積み上げられる環境を整える
- 自社だけで対応が難しい場合は、外部機関と連携し、制度対応まで見据えた体制を作る
これらは特別な取り組みではありません。「5年後を逆算する」だけで、今すぐ始められる内容です。
合格率と受験回数を前提にした育成方針を最初に決める
育成方針は「一発合格前提」ではなく、複数年・複数回受験を想定した設計にする必要があります。
最初に決めるべきなのは、「いつまでに、どこまで到達してほしいか」という大枠です。
そのうえで、1回目の受験で何を目指すのかを整理します。
この前提があるだけで、外国人介護士のモチベーションは大きく変わります。
実務の中で学習を積み上げられる試験対策の仕組みをつくる
実務と学習を完全に切り分ける必要はありません。むしろ、日々の業務の中で学習につなげることが現実的です。試験対策は、特別な時間だけで行うものではありません。
例えば、記録用語や制度用語を業務の中で説明するだけでも効果があります。定期的に試験対策に触れる機会を設けることで、知識が定着しやすくなります。無理のない形で「続けられる仕組み」を作ることが重要です。
登録支援機関や教育機関と連携し、学習計画を制度対応につなげる
施設単独で、すべてを抱え込む必要はありません。登録支援機関や教育機関と連携することで、学習計画や受験状況を客観的に整理できます。
特定技能(介護)は、受験資格・在留期間・制度上の判断が密接に関わる仕組みです。そのため、学習計画と制度対応を切り離さず、最初から一体で設計することが重要になります。
外部と連携しておくことで、試験や研修の進捗に応じた計画の見直しがしやすくなります。結果として、制度の選択肢を後から探すのではなく、想定したルートに沿って5年間を進める体制を整えることにつながります。
まとめ
- 特定技能(介護)は通算5年で満了し、何も準備しなければ原則として帰国になります
- 5年後も働き続けるためには、介護福祉士国家試験への合格が必須条件です
- 外国人受験者は合格率や受験回数の制約があり、一発合格前提の計画は現実的ではありません
- パート合格と在留期間延長制度を活用すれば、5年目に不合格だった場合にも1年の在留期間延長が認められます
- 早い段階から育成方針と学習計画を立てることが重要です
特定技能(介護)で働く外国人を5年後も戦力として働き続けてもらうためには、制度を「知る」だけでなく、「使う」視点が欠かせません。合格率や時間制約を前提に、今から計画を立てておくことで、選択肢は大きく変わります。自施設だけで判断が難しい場合は、登録支援機関など専門家と相談しながら進めることも有効です。
まずは現状を整理し、5年後を見据えた一歩を踏み出してみてください。

